概要
受容体(receptor)とは、生物の体にある外界や体内からの何らかの刺激を受け取る構造のことです。目や耳等の外界の情報を得る器官のことや、それらの器官の構成成分である受容細胞のこと、さらには刺激を受け取る分子やタンパク質のことも受容体と呼ぶことがあります。生化学では、神経伝達物質やホルモンを受け取る細胞内に存在するタンパク質のことを主に指します。
性質
受容体は分布する場所により、細胞膜受容体と核内受容体に大別されます。細胞膜受容体は、細胞膜を通過できない親水性の生理活性物質と結合することで不活性型から活性型に構造変化し、生理活性物質の情報を細胞内に伝達します。一方で核内受容体は細胞膜を容易に通過できる疎水性の生理活性物質と結合し、特定の遺伝子の配列を認識して結合することでその遺伝子の転写を活性化または抑制することができます。
また、細胞膜に存在する受容体は大きく4種類あります。
(1)Gタンパク質結合型受容体
7回膜貫通型の構造を有しています。シグナル分子が結合するとGタンパク質が活性化され、特定の二次メッセンジャーを合成する酵素が活性化あるいは不活性化されて、細胞反応が生じます。アドレナリン受容体、アデノシン受容体、ロドプシン等、神経伝達物質や光、多くのペプチドホルモンの受容体がこれに属します。
(2)イオンチャネル型受容体
シグナル分子の結合によって受容体の構造が変化し、特定のイオンが通り抜けられるようになって膜電位が変化します。骨格筋の細胞膜にあるニコチン型アセチルコリン受容体等がこのタイプです。
(3)サイトカイン受容体スーパーファミリー
シグナル分子が結合すると受容体は2量体となり、それがチロシンキナーゼと相互作用して活性化します。各種サイトカインの受容体、プロラクチン受容体等が属します。
(4)固有の酵素活性をもつ受容体
シグナル分子が結合すると細胞質側ドメインのチロシンキナーゼ活性やグアニル酸シクラーゼ、ホスファターゼ活性等が高まります。インスリン受容体、多くの成長因子の受容体が含まれます。
活用例
受容体の性質を活用した代表的なものとして、「薬」が挙げられます。
受容体に特定のリガンドが作用すると特定のシグナルが発生し、細胞が何らかの反応を示しますが、それが病気に関連するものであった場合、受容体とリガンドの結合をブロックすることで病気の発生や進行をくいとめることができます。
また鎮痛剤も同様の発想で、痛みを感じる受容体と特異的に結合することで痛みのシグナルを遮断する効果があります。このように本来結合するはずの神経伝達物質やホルモンの働きを阻害する物質をアンタゴニストといい、これを利用した薬を拮抗薬または遮断薬といいます。
一方で、受容体と結合して神経伝達物質やホルモンと同様の作用を起こし細胞を活性化させる物質をアゴニストといい、これを利用した薬を作動薬または刺激薬といいます。