フェロモンとは
動物・植物・微生物において、体外に分泌され同種の他個体に作用して、ある特定の行動や生理的変化を起こす化学物質のことをいいます。例えば、昆虫は様々なコミュニケーション手段を備えており、鳴き声で聴覚を、発光や翅の模様は視覚を介したコミュニケーションとして利用されています。コミュニケーションツールの中でも、嗅覚に作用する匂い化合物は一般にフェロモンと呼ばれています。
フェロモンして知られているもの
- 性フェロモン
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異性を誘引して交尾行動を誘引するといった配偶行動に影響を与えるフェロモンは性フェロモンと呼ばれています。ファーブ(1823~1915年、仏)により発見され、その後、ブテナント(1903~1995年、独)らによってカイコガより単離され、構造が決定されたボンビコールも性フェロモンの一種です。これまでに約570種類のガ類昆虫の性フェロモン成分が同定されており、その主なものは、炭素数が10~18の直鎖脂肪族化合物であり、0~3個の二重結合と末端に酸素を含む官能基をもつアルコール、アルデヒド、酢酸エステル、またはエポキシ化合物といった非常に単純な構造の低分子有機化合物です(図)。
- 集合フェロモン
- この集合フェロモンについては、チャバネゴキブリを用いた研究が盛んに行われており、雌雄、成虫、若虫を問わず集合を引き起こすフェロモンであることが知られています。
- 警報フェロモン
- アブラムシ、アリ等がもつことで知られているフェロモンです。捕食者、侵入者等により危険が生じた場合に同種の他個体へ危険を知らせるフェロモンです。
- 道しるべフェロモン
- シロアリのような社会性昆虫がもつことが多く、巣から餌場までの道筋を迷わなくするための標識として用いられるフェロモンです。
参考文献
入門 ケミカルバイオロジー / 発行所:オーム社 / 編集:入門ケミカルバイオロジー編集委員会 / P.48~52, 184