iPS細胞とは
iPS細胞(induced pluripotent stem cells:誘導多能性幹細胞)とは、体細胞に数種類の転写因子を導入することにより、「分化万能性」を持たせた細胞です。
分化万能性とは
生物の体は組織や器官によって異なる性質、形態の細胞で構成されていますが、これは胚発生が進むに伴い、同一の細胞(受精卵)からそれぞれの組織や器官を構成する細胞へと分化(役割分担)しているためです。この受精卵のように、全ての組織や器官を構成する細胞に分化できる能力を分化万能性と言います。
植物は通常、体を構成するどの細胞であってもこの分化万能性を持っており、組織切片を適切に培養することで植物体全体を作ることができます。しかし、動物では受精卵以外に万能性を持つ細胞はなく、人工的に分化万能性を持たせるための研究が進められてきました。
分化万能性を持つ細胞を人工的に作ることができれば、病気患者自身の細胞を利用することで拒絶反応のない移植用組織や臓器を作ることが可能になると期待されており、再生医療の実現に向けて世界中で注目されています。
ES細胞とiPS細胞の違い
ES細胞(Embryonic Stem cells: 胚性幹細胞)とは、動物の発生初期段階の胚細胞から作られた分化万能性を持つ細胞です。再生医療への応用が注目されましたが、生命の根源である胚細胞を滅失してしまうことから、倫理面での問題が強く指摘されています。
それに対してiPS細胞は、胚細胞ではなく体細胞に分化万能性を持たせるので、理論的には皮膚や血液等の細胞からも分化万能性を持った細胞を作ることが可能です。ES細胞の倫理的問題を根本から解決できることから、実用化が期待されています。